月別アーカイブ: 2015年9月

骨粗鬆症の講演会

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

シルバーウィーク明けは患者さんも多く忙しい日々でしたが、9月26日土曜日に講演を聞いてきました。骨粗鬆症については、2015年にガイドラインが改訂され治療の選択肢も広がっており、ますます専門的な知識が必要となってきています。今回の集まりは済生会吹田病院の主催ですが、吹田市では骨粗鬆症の地域連携がよく機能しているようです。

さて講演の内容は、2015年改訂の骨粗鬆症治療ガイドラインについてと、ビスホスフォネート関連の顎骨壊死の2題でした。

最初の演題は済生会吹田病院の先生によるお話でした。ガイドラインについてはすでに読んでいたのですが、その後に出された論文のデータや今後認可されるであろう薬剤もご紹介頂けました。

2つ目の演題は、松本歯科大学の先生による骨吸収抑制剤と抜歯などの処置に伴う顎骨壊死のお話でした。私も多くの患者さんの骨粗鬆症を治療していますので、時々歯科の先生から休薬を依頼されるのですが、果たしてそれが必要なのかどうかはあまり深く追究していませんでした。

講演の内容は衝撃的で、抜歯などに伴う顎骨壊死と骨吸収抑制剤の服用には因果関係はないと考えられ、休薬期間を置く方がよくないのではないかというものでした。

まず顎骨壊死と言われているが、その本体は骨髄炎であり、感染による可能性が極めて高いとのことでした。次に、抜歯せねばならないような歯の周囲にはすでに感染があり、それを2か月以上も放置すれば、その間に感染は拡大します。その後に抜歯すれば、骨髄炎を生じるのは当然ありうることです。また、骨吸収抑制剤を服用している人はすでに骨粗鬆症を生じており、骨の代謝が悪化しています。つまり、骨吸収抑制剤が悪いのではなく、骨代謝の悪化している患者さんの歯に感染を生じているから、顎骨壊死といわれるような病態が生じると種々のデータを示して解説されました。また、骨粗鬆症薬を休薬すると15%以上の脱落が出るようで、そのデメリットは非常に大きなものです。

実際ドイツなどではほとんど顎骨壊死の発生がなくなっているのに、日本では症例が増加していることをみても、休薬は効果がなく感染を増悪させているだけではないかとおっしゃっていました。そのうえで顎骨壊死が感染症であるのだから、医師と歯科医師が連携して口腔内の衛生状態を改善させることが発生の防止になると力説されていました。

まさに目から鱗といえるお話でした。

その後の懇親会では、顎骨壊死と骨粗鬆症治療の問題点について、さらに詳しくお答えいただけました。また、済生会吹田病院の先生には先進的な取り組むである体外衝撃波についても伺えました。難治性足底腱膜炎の患者さんをご紹介したこともあるので、大変勉強になりました。また、10月には済生会千里病院と済生会吹田病院の整形外科合同勉強会がありますので参加するつもりです。

骨折予防は健康寿命には非常に重要な要素です。今後は医療モール内の歯科診療所とも連携しながら骨粗鬆症の治療を続けていきたいと思います。

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痛いということ

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

先日、老衰による死を特集した番組が放送されました。食事をとっても体重が減り、最後には食事量が減って、死を迎えるという内容でした。体の細胞が減っていき、吸収も悪くなり、生命を維持することができなくなるようですが、これは極めて自然なことなのでしょう。穏やかな患者さんの表情からは苦痛はないようです。

興味深いことに研究者も死の数日前から苦痛はないようだと言っていました。つまり、痛みとは生命を維持するために障害となるものを知らせるアラームであり、生命の維持自体ができなくなりつつある老衰では痛みがないと考えられているようです。

これは、痛みの治療を行っている私には非常に興味深い話でした。というのも、逆にいえば痛みを感じるということはそれだけ生命活動が旺盛であるということにも通じるからです。たしかに、子供は痛みに敏感です。そのように考えると、痛みの除去は患者さんの願いですが、痛いということはそれだけ活力があるということであり、体からの治りたいという意志のあらわれといえます。それだけの元気があるのだから、かならず良くなるはずという信念で患者さんとともに治療に向かいたいと思います。

膝の痛みの講演会

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

今日は、当院から徒歩5分ほどの千里ライフサイエンスセンターで膝の痛みについての講演を聞いてきました。これまでは病院勤務医師として手術治療もよく行っていたのですが、開業後は手術以外のリハビリや注射、投薬(保存治療といいます。)でどこまで治せるかを日々考えています。その点では、今日の講演は非常に役に立ちました。

演題は2つあり、最初は変形性膝関節症の自宅での訓練法でした。演者の先生は膝の痛みの保存療法では非常に有名でマスコミなどにもよく出ておられる先生です。お話もお上手で、膝の痛みには大腿四頭筋の訓練が不可欠であり、自宅での体重計を用いた訓練法や膝の変形に応じた体重のかけ方の指導など、実践的な内容でした。

2つ目は人工膝関節の手術で有名な先生からの、いかに切らずに膝の痛みをなおすか、というお話でした。この先生も日本で指折りの人工膝関節の症例数を誇られている先生でテレビなどにも出られているのですが、その先生が手術の前に保存治療を尽くしておられるというのが、非常に意外でした。しかし話の内容は素晴らしく、レントゲンでは手術しかないというような患者さんでも減量、筋力訓練、歩行の姿勢指導で相当関節が傷んでいても痛みは改善できるということで、実際の患者さんの写真などを示されながらご説明頂き、目から鱗の状態でした。

ただ、減量の重要性はわかっていても、運動ができないほど膝の痛い方には難しい場合も多いのです。しかし、運動量が落ちているなら摂取カロリーを落とすほうがいいのは明らかなので、なんとか継続的に取り組む方法を考えたいところです。

いずれの方法も始めること自体は難しくないのですが、地道な継続が必要ですので、患者さんに寄り添える診療所ならではの工夫を加えて、お役に立てるようにするつもりです。

講演のあとの懇親会では、新参者にもかかわらず、なりゆきで中締めの挨拶を求められてしまいました。内心困ったことになったと思っていましたが、挨拶の後には千里中央に住んでおられる複数の参加者から、整形外科を探していたんです、とお声をかけて頂きました。名刺をお渡しすると、何かの折には受診しますからとのお返事で、勉強しながら、地域ともつながれたことに感謝するだけの会でした。

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人工知能の将来

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

先日、テレビで人工知能が東大合格を目指す番組を放送していました。いまの人工知能は、すでに高校生の模擬試験で偏差値50以上になっています。開発者の話では、過去の例の検索などは得意なので、世界史などが高得点になっているそうです。

その後、将来人工知能がどのような仕事を担うかという話になりました。会計などは当然として、過去の判例などを調べる弁護士やこれまでの融資事例をビッグデータとして蓄積する銀行の審査、あるいはプレスリリースされた記事を書く記者などが今後は人工知能に置き換えられる可能性が言われていました。人工知能は、過去の例を検索し、論理的に類似のものを作るのに優れているからです。一方、言葉をイラストにすることや会話は苦手なようです。開発者は少年ジャンプを読むのが一番難しく、未来永劫できないかもしれないと言っておられました。

一方、人工知能が担えない仕事として、介護士や保育士のような個別に対応が必要な仕事をあげておられました。医師の診断にも人工知能を使うということが徐々に行われていますが、このような過去のデータから類似例を調べるといった仕事は得意かもしれません。しかし、医師の仕事は、診断とそれに基づいた治療というだけではないようにも思われます。実際、医学的に正確なことをいわれていても、満足されない患者さんが多いからこそ、ドクターショッピングなどがおこるのではないでしょうか?日々の診療は、患者さんの身体状態や感情の変化を会話や表情からも推測するものであり、それに適切に対応することが安心につながるのだと思います。

人工知能は、与えられた仕事は非常に上手にこなすでしょうから、目標を与えれば「それはやりました。」と応えてくれるとは思いますが、「ここまでやってもらえるのか!」という熱意を感じさせることや期待を超えたものにはなかなか到達できないと思います。そして、私たちは、いろいろな意味で患者さんに「本当によかった。」といわれるような医療を提供したいと思っています。

済生会千里病院登録医の会

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

徐々に秋らしさも増している今日この頃です。

9月12日土曜日に済生会千里病院登録医の会に参加しました。病院全体で地域連携に力を入れておられ、開院から2か月で数人の患者さんを紹介しています(診察の予約は夜8時まで受けてくださっています。)ので、非常に心強い存在です。

今年7月の開院ですから、もちろん初参加ですが、年2回、済生会千里病院と近隣の先生方との地域連携を目的とされて、今年で47回目だそうです。日頃からお世話になっている近隣の先生方のお顔もあるなか、木内院長や竹内地域連携室長から、病院の現況と将来構想を伺いました。その後、新規登録医の紹介があり、簡単にご挨拶しました。今回の新規登録医は42名で合計は600名以上だそうです。

それに続く講演会では、C型肝炎の最新治療、脳アミロイド血管症、在宅医療の実際という3題でした。

C型肝炎は、関節リウマチでメソトレキサートや生物製剤導入の際に問題となることがあります。実際、当院にも済生会千里病院でC型肝炎を治療中の関節リウマチ患者さんがおられますので、非常に興味深く拝聴しましたが、新薬でのウイルス除去率が95%以上ということに驚きました。いまやC型肝炎は治癒が期待できる疾患となっているようです。

また在宅医療の話では、いかに末期がん患者の疼痛をとるかという話が、痛みを対象としている整形外科医にとって参考になりました。講演の中でご紹介された地域全体で在宅支援を行っている大阪市東成区の取り組みには多くの先生が感心されていました。

講演会後の懇親会では整形外科部長と総合診療科部長のお二人から患者さんの経過なども詳しく伺え、これからも安心して連携していただけると実感しました。もちろん、近隣の開業されている先生方ともいろいろなお話ができ、非常に有意義な時間でした。

これまでも書いてきましたが、今後も顔の見える形で連携することにより、地域の医療に少しでも貢献できるよう努力いたしますので、よろしくお願いいたします。