月別アーカイブ: 2015年9月

医療事故について

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

前回のブログでは書けなかったのですが、実は会が終わった後に、日頃考えていることを司会の先生に尋ねてみたので、記します。

Q: 「結果が良くない場合、医療サイドの過失が否定されれば、患者さんは体を傷めた挙げ句になんの保障もされません。追加の治療を受ければ、その費用も負担せねばなりません。だから、患者さんは医師の過失を追及せざるをえなくなり、医師患者関係がとげとげしくなるのではないでしょうか?いろいろと問題はあるようですが、産科のような無過失賠償制度を導入することは考えられないのですか?」

A: 「良心ある医師は結果が悪かった際には不可抗力であっても、患者さんに申し訳ないと思い、できるだけのことをしようと思っています。しかし、今の制度では医療側の過失が認められない場合、患者さんは泣き寝入りということにならざるを得ないのです。無過失賠償は望ましい形だが、一部の悪い病院と患者が結託して高額な保険金をだまし取るという恐れもあり、なかなか実現し難いのです。」ということでした。

たしかに、貧困ビジネスというような公の補助をだまし取るようなことさえ、報道されていました。人を救う制度は、それを使う人の良心に委ねられている部分が多いため、心して使わねばならないと改めて思ったことでした。

もう一つよく議論されるのは、医療事故を専門に取り扱う機関の設置です。日本国憲法76条2項では、特別裁判所の設置を禁止していますが、これは戦前の軍法会議などの反省から来ているものであり、現在は実情に応じていろいろな機関が設置されています。

専門性や特殊性を重んじて海難審判国税不服特許などについては専門の行政審判機関が置かれていますし、さらに特許とも関係する知的財産については、東京高等裁判所に知的財産高等裁判所という特別の支部を設けています(ちなみに検察は警察と同様に行政機関です。)。これらの案件よりも、医療事故が国民に身近であることは明らかです。裁判所にも医療集中部というところがあるそうですが、そこの裁判官はずっといるわけではなくて、3年ほどで移動するのだそうです。それではなかなか専門家も育たないのではないでしょうか?

ただ、行政に審判を委ねるのは、その時その時の世相の影響が司法の比ではないでしょうし、本来不確実な医療を法で裁くということ自体が難しいのですから、過失の有無を争うという現在の構図自体を根本的に見直すべき時なのかもしれません。

2015年9月5日の講演会

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

池田市のつじの骨粗鬆症・整形外科クリニックの内覧会のあとに、大阪で講演会に参加しました。

2つの演題で、医療事故・医事紛争の話とNSAIDの副作用と選択というお話でした。

最初の演題は医療裁判を専門にされている弁護士さんの話でした。医療という侵襲を伴う行為がどのような過程で、法に触れるようになるのか、刑事責任や民事責任というようなことから詳しくお話になりました。そのなかで、医療事故では、原告(=患者側)の勝訴率が30%程度というデータがありました。このデータをもって、被害者が医療の壁のもとに不当な判決を受けていると主張する人もいるが、実情はそうではないとのことです。なぜなら、医療者に過失がありそうな場合はほとんどが和解による解決になっており、裁判まで進むのは医療者側は過失を認めることができない事例であり、そのなかで3割も過失を認定されるのだから、裁判は難しいというお話でした。そのようなことは、医師のみならず、患者さんにも不幸ですから、なんとかならないかと思わざるを得ませんでした。

2つめはNSAID、私たち整形外科医がよく使う痛みどめです。これを服用することで、胃を傷めることはよく知られているのですが、内視鏡や論文のデータを交えてわかり易くお話しくださいました。また、潰瘍治療薬やNSAIDの骨や軟骨に対する影響も教えてくださり、痛みを除くことが大きな目的である整形外科医には、非常に有益でした。

なかなか時間がとれないこともありますが、今後も積極的に情報をとり、すこしでも安全で良質な医療を提供できるようにしたいと思います。

 

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内覧会に行きました

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

今日は、以前にご紹介したつじの骨粗鬆症・整形外科クリニックの内覧会でした。場所は市立池田病院のすぐ近く、幹線道路に面しています。

時間内には患者さんもたくさん見えられたとのことでしたので、患者さんのお邪魔にならないように終了時間すぎに伺いました。

クリニックは明るい雰囲気で、院長の辻野先生の人柄そのままにスタッフの皆さんも安心できるような雰囲気の方ばかりでした。これまで腰や頸の脊椎外科専門医で圧迫骨折の患者さんも多く診られていますから、骨粗鬆症の検査や治療の経験も豊富な先生です。市立池田病院との連携も万全ですし、患者さんも安心してかかれるクリニックだと思います。

最後にクリニックの前で写真を撮って頂きました。今後ともよろしくお願いいたします。

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医師と患者さんとのコミュニケーションの難しさ

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

このブログでもよく書いていますが、患者さんとのコミュニケーションがとれるクリニックを目指して、開院しました。結果として、一人ひとりの患者さんと話す時間が長くなりますので、再診患者さんが増えてくると、待ち時間が長くなる傾向にあります。患者さんのお話を十分に聞きながら、いかに待ち時間を減らすか、あるいは待ち時間を有効に使っていただくかが最大の課題となっています。

しかし、先日驚くようなことがありました。腰痛の患者さんでしたが、いつものように病歴をうかがっていました。すると、他の整形外科でまだ治っていないのに、医師からもう来ないで下さいと言われた、というのです。どういうことか尋ねてみると、先生から、ここは注射で治すので、注射が嫌な人はもう来ないでください、と言われたそうです。患者さんのお話ですから、その先生が実際にどうおっしゃったかはわかりませんが、少なくとも患者さんはそう受け取られたわけです。

このお話をうかがった時、患者さんには失礼ですが、あまりのことに診察室にいた看護師と一緒に苦笑いしてしまいました。確かに治療に非協力的な患者さんに困ることはあります。服薬のコンプライアンスが悪いなど、治療効果に決定的な影響を与える場合は、強めに言うこともありますし、最悪、責任持てませんということもあります。しかし、腰痛の治療で、注射がいやというだけで患者さんに来ないでくださいというのはどうなのでしょうか?いまだに腰痛の治療は、混沌としていて明らかな体系は確立されていません。だからこそ、いろいろな選択肢があるわけです。そのような中で医師が望む方法に従う以外の患者は診ないというのは、あまりにも一方的な気がします。

実際は、言い方の問題でそういう内容の発言ではなかったかもしれません。しかし、それとしても患者さんにそのように伝わってしまったとすれば、改善の余地はあるでしょう。医師患者関係の難しさがよく言われますが、言葉は内容とともに、言い方も非常に大事かもしれないと思わされた出来事でした。

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