タグ別アーカイブ: リウマチ

2015年9月5日の講演会

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

池田市のつじの骨粗鬆症・整形外科クリニックの内覧会のあとに、大阪で講演会に参加しました。

2つの演題で、医療事故・医事紛争の話とNSAIDの副作用と選択というお話でした。

最初の演題は医療裁判を専門にされている弁護士さんの話でした。医療という侵襲を伴う行為がどのような過程で、法に触れるようになるのか、刑事責任や民事責任というようなことから詳しくお話になりました。そのなかで、医療事故では、原告(=患者側)の勝訴率が30%程度というデータがありました。このデータをもって、被害者が医療の壁のもとに不当な判決を受けていると主張する人もいるが、実情はそうではないとのことです。なぜなら、医療者に過失がありそうな場合はほとんどが和解による解決になっており、裁判まで進むのは医療者側は過失を認めることができない事例であり、そのなかで3割も過失を認定されるのだから、裁判は難しいというお話でした。そのようなことは、医師のみならず、患者さんにも不幸ですから、なんとかならないかと思わざるを得ませんでした。

2つめはNSAID、私たち整形外科医がよく使う痛みどめです。これを服用することで、胃を傷めることはよく知られているのですが、内視鏡や論文のデータを交えてわかり易くお話しくださいました。また、潰瘍治療薬やNSAIDの骨や軟骨に対する影響も教えてくださり、痛みを除くことが大きな目的である整形外科医には、非常に有益でした。

なかなか時間がとれないこともありますが、今後も積極的に情報をとり、すこしでも安全で良質な医療を提供できるようにしたいと思います。

 

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医師と患者さんとのコミュニケーションの難しさ

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

このブログでもよく書いていますが、患者さんとのコミュニケーションがとれるクリニックを目指して、開院しました。結果として、一人ひとりの患者さんと話す時間が長くなりますので、再診患者さんが増えてくると、待ち時間が長くなる傾向にあります。患者さんのお話を十分に聞きながら、いかに待ち時間を減らすか、あるいは待ち時間を有効に使っていただくかが最大の課題となっています。

しかし、先日驚くようなことがありました。腰痛の患者さんでしたが、いつものように病歴をうかがっていました。すると、他の整形外科でまだ治っていないのに、医師からもう来ないで下さいと言われた、というのです。どういうことか尋ねてみると、先生から、ここは注射で治すので、注射が嫌な人はもう来ないでください、と言われたそうです。患者さんのお話ですから、その先生が実際にどうおっしゃったかはわかりませんが、少なくとも患者さんはそう受け取られたわけです。

このお話をうかがった時、患者さんには失礼ですが、あまりのことに診察室にいた看護師と一緒に苦笑いしてしまいました。確かに治療に非協力的な患者さんに困ることはあります。服薬のコンプライアンスが悪いなど、治療効果に決定的な影響を与える場合は、強めに言うこともありますし、最悪、責任持てませんということもあります。しかし、腰痛の治療で、注射がいやというだけで患者さんに来ないでくださいというのはどうなのでしょうか?いまだに腰痛の治療は、混沌としていて明らかな体系は確立されていません。だからこそ、いろいろな選択肢があるわけです。そのような中で医師が望む方法に従う以外の患者は診ないというのは、あまりにも一方的な気がします。

実際は、言い方の問題でそういう内容の発言ではなかったかもしれません。しかし、それとしても患者さんにそのように伝わってしまったとすれば、改善の余地はあるでしょう。医師患者関係の難しさがよく言われますが、言葉は内容とともに、言い方も非常に大事かもしれないと思わされた出来事でした。

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はじめまして、吉田です

初めまして、看護師吉田です。

沖縄🌻生まれの沖縄育ち😆でも、この歳になって大阪生活の方が長くなってしまってますが…(笑)

今日は私の好きな沖縄の方言を紹介させて頂きますね🎵

『なんくるないさ』

いっけん、なんとかなると解釈しがちですが、そんな軽いものではなく、「挫けずに正しい道を歩むべく努力をすれば、いつか良い日が来る」という意味です。

何の努力もしない事には何ともならないと自分にも言い聞かせ壁にぶつかった時には心の中で『なんくるないさ』と唱えている今日この頃です。

沖縄にはまだ沢山、紹介したい方言がありますので…また紹介しますね🎵

 

生物製剤の講演会

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

8月29日土曜の午後に生物製剤の講演会に参加しました。

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当院はまだ開設から2か月足らずですが、リウマチ科を標榜している関係上、すでに生物製剤を使用している患者さんが数名おられます。

ご存じのようにリウマチの治療は目覚ましく進歩しており、生物製剤もインフリキシマブ(商品名レミケード)の日本での認可から10年以上経過し、複数の選択肢があります。さらに、経口剤であるトファシチニブ(商品名ゼルヤンツ)も生物製剤と同等の効果が期待されています。しかし、どの生物製剤の有効性も高いために、種類が増えたゆえに選択を難しくしている面も否めません。

今回の講演会では、どのような患者さんにどのような生物製剤を用いるかを、エキスパートの先生方から伺うことができました。当疾患活動性が高い場合に生物製剤の導入を考えますが、以下のような疑問はまだ完全に解決されてはいません。

1)若年者と高齢者では自ずから感染症などへの抵抗力に差があるため、効果と安全性の違いを考慮する必要があるので、どう選択するのか?

2)メソトレキサート(商品名リウマトレックス、メトレート)をはじめとする抗リウマチ薬が副作用などで服用できなければ、中等度の疾患活動性でも生物製剤導入を考える場合もあります。このような場合はどの生物製剤を用いるべきか?

3)生物製剤で投与量に幅を持たせてあるものの、投与量はどうするのか?

4)最初は効いていた生物製剤の効果が下がった場合(二次無効といいます)、次に使うのはどの製剤がよいのか?

5)高齢者でのメトトレキサートは、腎機能低下などで副作用のリスクが上がるので、生物製剤への切り替えの方が安全なのか?

今回の講演会はそのような疑問に焦点をあてて、会場からのアンケートもとりながら進められました。私の回答は多くの先生と同様の選択でしたので、大きな間違いはないだろうと安心しました。新潟から講演に見られた先生が、生物製剤の除痛効果の立ち上がりに差があるため、最初はステロイドを併用したり、投与間隔を短くしたりすることを強調されていました。当院でも除痛のために短期間のステロイド投与はよく行っていますので、納得できる話でした。また北陸は診療圏が広いため(特に冬は船!や電車が止まることも多いため、困るそうです。)、専門病院で生物製剤導入後に診療所と連携していることについて言及されていたのが、印象的でした。

今後も、診療所として小回りが利くことを生かして、病院の先生方と連携し、地域のリウマチ患者さんのためになれるように努力したいと思います。

リウマチと漢方

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

近畿地方も台風が過ぎ去り、空も徐々に秋らしくなってきています。

さて、タイトルの関節リウマチ(以下はリウマチとします)と漢方薬についての、現在の当院の考えは以下の通りです。まず、リウマチの目標は関節破壊を予防し、日常生活に障害がないようにすること、ひいては健康寿命を長くすることです。そのために、関節破壊が起こる前に診断し、治療介入することが推奨されているのです。

現時点で、関節破壊の抑制効果が明らかなのは、メソトレキサート(リウマトレックスなど)と生物学的製剤です。いずれも用法に注意は必要ですが、これまでのデータで有効性は確認されています。したがって、重症例や若年者にはこのような薬の使用が必要な場合が多くなります。これにタクロリムス(プログラフ)を追加する場合もあります。

一方、比較的軽症な場合、サラゾスルファピリジン(アザルフィジンなど)やブシラミン(リマチルなど)、イグラチモド(ケアラムなど)も有効な場合があります。このようないわゆる抗リウマチ薬を組み合わせて治療するのが標準的です。

あともう一つは、常に悪役とされるステロイド(プレドニゾロン、プレドニンなど)です。痛みをとり、炎症を鎮める効果は抜群ですが、関節破壊の予防効果は弱く、種々の副作用があるため、治療初期の痛みをとるために短期間使い、徐々に減量、中止していくのが一般的です。コントロールの難しい方でもなるべく少量(一日3mg以下)にすることが多いと思います。

では、漢方はどのような場合に使うのでしょうか?

当院では、症状や血液検査、レントゲンなどではリウマチと診断しきれない、いわゆる未分類関節炎の経過観察時(通常6カ月以内です)、および上記の抗リウマチ薬のサポートとして投与しています。これまで発表された論文やデータからはなかなかそれ以上の患者さんに漢方のみで対処するのは難しいのではないかと考えています。

まだ開院間もない当院へも数年間漢方だけでリウマチを治療したがよくならないといって来院され、すでにレントゲンでの関節破壊が起こっている患者さんもおられます。現在の医療では一度傷んだ関節を元に戻すことは難しいからこそ、予防が重要視されているのですが、まだまだ多くの患者さんにそのような情報が届いていないのかもしれません。

インターネット上にも、リウマチの治療に関して漢方のみで治療できるとか、ステロイドや抗リウマチ薬は有害無益といって患者さんの不安をあおるような情報や体験談などがあふれています。実際、漢方のみで治癒される患者さんがあることは否定しませんし、そのこと自体は喜ばしいことです。ただ、そのような情報には、どのような患者さんに漢方が効き、どのような患者さんには効かないのか、実際の有効率はどの程度か、どのくらいの期間で効果を判定するのかなど、臨床上必要なデータが記載されていないことが多いのです。漢方で治らなかった方の体験談というのはほとんどありませんが、その有効率が標準治療を超えているとは考えにくいと思います。まとめていうと、標準治療では70-80%程度の患者さんで症状の進行を抑えられますが、副作用や薬の継続が必要といった面もあります。一方、漢方などが効いた場合、患者さんは非常に楽だと思いますが、その有効率がわからないので、それだけに頼るのは難しいと考えています。また、漢方を勧める方の中には、そのほかの薬を使ってはならないという主張をされている方もあり、そのように治療の選択肢を狭めるのはいかがなものかとも思います、

まだまだリウマチに関してもわかっていないことが多いため、将来的には現在の標準治療が否定され、漢方のみでの治療も可能となるかもしれません。しかし、現時点で当院はリウマチの治療について上記のような考えを持っています。実際には患者さんとご相談し、治療方針を決めるわけですが、できるだけ適切な情報を提供できるように、新たな知識の吸収に努めようと思います。