柔道整復師・橋本です!

近頃、痛みや痺れの『 生理学 』について論文や本を読む事が多く、この2ヶ月で10冊程読みふけました。

生理学とは、『 身体の仕組み 』について学ぶ学問です。

読んでみると、論文発表者や研究者によって理論や理屈も様々。

誰を信じるかは読み手によって違うので、私はエビデンス(科学的根拠)に基づいているか否かで判断するようにしています。

先日、叔母の命日でお寺に行った際、長時間正座をしていて足が痺れて立てなかった事がありました。

足先は冷たくなり感覚も無く、自力で指を動かす事も出来ませんでした。

暫くすると回復しましたが、『 腰や脚の疾患が無いのに一体なぜ⁈ 』と、疑問を持ちました。

『 脳ミソまで筋肉か?』と言われた私が珍しく読書に熱中したので、これがどういう仕組みになっているのか『 私なりの解釈 』でお話したいと思います。

少し難しいかもしれませんが、まず神経について簡単に説明すると、

皮膚や筋肉を叩いたり、針を刺したり『 感覚刺激 』が入ると細胞を興奮させ、電流を発生させます。

導線の中を電流が流れる様に、発生した電流は神経を上行して脳に伝え『 痛い 』と判断します。(これを上行性伝導路と言います)
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『感覚』を司る神経には、有髄線維(A繊維・B線維)と無髄線維(C線維)があります。

『 有髄A線維 』の一つ、Aβ線維は触覚、Aδは痛覚(チクチク・ピリピリとする鋭い痛み)。

『 無髄線維 』のC線維は痛覚(ジンジンする鈍い痛み)を伝えます。

『 A線維 』のような太い神経は『 血行障害 』に弱く、15~20分で電流を伝えれなくなる為、太い線維の方から順に(A→B→C)機能停止していきます。

『 C線維 』は低温(約15度以下)になる程機能が低下しますが、血行障害には『 比較的強い 』と言われています。

『 有髄運動神経(Aα・Aγ)』は感覚神経よりも血行障害に強いそうです。

こうした生理学の理論を『 正座による痛みや痺れ 』に当てはめた場合、

① 正座を続けると、膝から下の血行障害が発生する。

② 神経は『 無髄線維 』より『 有髄線維 』の方が血行障害による影響を受けやすい。

③『 運動神経 』より『 感覚神経 』の方が血行障害による影響を受けやすい。

④ 正座によって血行障害になると、最初に脚の触覚を伝える『 有髄Aβ線維 』が機能障害を起こし『 触覚 』が低下する。

通常、『 触覚Aβ線維 』は『 痛覚Aδ・C線維 』を常時抑制している。(下行性疼痛抑制と言います)

例えば、『 痒み 』は『 痛覚C線維 』になりますが、虫刺されなど掻く事で痒みが治るのは、触覚を刺激する事で痛覚に『 抑制 』がかかる為だそうです。

⑤ 正座による血行障害でAβ線維は機能障害を起こしているので、下行性疼痛抑制機能が停止し『 痛覚の異常感覚 』が増加する。(これを脱抑制と言います)

しかし、この段階になると血行障害に弱い『 有髄痛覚Aδ線維 』は機能障害されているが、血行障害に強い『 無髄痛覚C線維 』は機能障害されていない為、『 ジンジン 』とした痛覚(異常感覚)を感じるようになる。

⑥ 更に血行障害が続くと、運動神経も機能障害が生じ脚の運動が麻痺する。

⑦ 最後に『 無髄痛覚C線維 』も機能障害を起こし『 ジンジン 』という異常感覚も消失し、脚は『 無感覚状態 』になる。

⑧ 正座後の回復は、この逆順で戻る。

今回、私なりの解釈でお話しましたが、『 長時間正座すると痺れる 』と言う一連の流れを理解する事で、『 痛みや痺れの神経伝達の仕組み 』を理解する一つの方法になると思います。

そして昨年、京都大薬学研究科の金子周司教授らがこの正座後の痺れをマウス実験により解明し、英科学誌「サイエンティフィック・リポーツ」誌に発表されてました。

発表によると、哺乳類には『 TRPA1 』と呼ばれる刺激を脳に伝えるセンサーがあり、正座による血液遮断から解放されると体内で発生した活性酸素が感覚神経『 TRPA1 』を刺激し、痛みにも近い強い痺れ感を発生させるのだそうです。

今後『 痛みや痺れ 』の研究が進む事で、病気などで起こる痛みや痺れを解消する手がかりになるのではと思います。

本日も最後まで読んで頂きありがとうございました。

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