夏は来ぬ その1

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

徐々に夏がちかづく気配を感じる今日この頃です。さて、前回の続きで『夏は来ぬ』です。

まずはこの題について。(以下は中学高校の古文や英語で習ったことです。)

『来ぬ』が文末に来ているということは言い切りの形(終止形)です。『こぬ』と読む場合は、『来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くやもしほの 身もこがれつつ』という藤原定家が自ら百人一首に入れた歌のように言い切りの形(終止形)ではなく、あとに名詞が続く形(連体形)です。言い切りの形なら『来ず(こず)』になります。ただし、『誰それは、まだ来ぬか』のように疑問や詠嘆の形で用いられることがあるため、否定と誤まることが多いと習いました。

正しい読み方は『きぬ』なのですが、この『ぬ』は完了を表す助動詞で、口語(現代語)にはありません。口語では過去形と完了形が同じ形であるため、『春が来た』の英訳をSpring came. としてしまいがちですが、正しくはSpring has come. です。有名な映画『風と共に去りぬ』の原題はGone With the Wind ですから、この完了の意味を上手に含ませた魅力的な邦題となっています。その他にも『風立ちぬ』や、以前に紹介した『秋来ぬと 目にはさやかに 見えねども 風の音にぞ おどろかれぬる』(この歌の場合、形の上では『きぬ』か『こぬ』か判断できません。)にみられるように、もう風が吹いてきた、すでに秋が来ているという意味ですから、『夏は来ぬ』は夏が来たという意味です。

面倒な文法の話だけで長くなってしまったので、歌詞については次にさせてください。

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