日別アーカイブ: 2015年9月7日

医療事故について

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

前回のブログでは書けなかったのですが、実は会が終わった後に、日頃考えていることを司会の先生に尋ねてみたので、記します。

Q: 「結果が良くない場合、医療サイドの過失が否定されれば、患者さんは体を傷めた挙げ句になんの保障もされません。追加の治療を受ければ、その費用も負担せねばなりません。だから、患者さんは医師の過失を追及せざるをえなくなり、医師患者関係がとげとげしくなるのではないでしょうか?いろいろと問題はあるようですが、産科のような無過失賠償制度を導入することは考えられないのですか?」

A: 「良心ある医師は結果が悪かった際には不可抗力であっても、患者さんに申し訳ないと思い、できるだけのことをしようと思っています。しかし、今の制度では医療側の過失が認められない場合、患者さんは泣き寝入りということにならざるを得ないのです。無過失賠償は望ましい形だが、一部の悪い病院と患者が結託して高額な保険金をだまし取るという恐れもあり、なかなか実現し難いのです。」ということでした。

たしかに、貧困ビジネスというような公の補助をだまし取るようなことさえ、報道されていました。人を救う制度は、それを使う人の良心に委ねられている部分が多いため、心して使わねばならないと改めて思ったことでした。

もう一つよく議論されるのは、医療事故を専門に取り扱う機関の設置です。日本国憲法76条2項では、特別裁判所の設置を禁止していますが、これは戦前の軍法会議などの反省から来ているものであり、現在は実情に応じていろいろな機関が設置されています。

専門性や特殊性を重んじて海難審判国税不服特許などについては専門の行政審判機関が置かれていますし、さらに特許とも関係する知的財産については、東京高等裁判所に知的財産高等裁判所という特別の支部を設けています(ちなみに検察は警察と同様に行政機関です。)。これらの案件よりも、医療事故が国民に身近であることは明らかです。裁判所にも医療集中部というところがあるそうですが、そこの裁判官はずっといるわけではなくて、3年ほどで移動するのだそうです。それではなかなか専門家も育たないのではないでしょうか?

ただ、行政に審判を委ねるのは、その時その時の世相の影響が司法の比ではないでしょうし、本来不確実な医療を法で裁くということ自体が難しいのですから、過失の有無を争うという現在の構図自体を根本的に見直すべき時なのかもしれません。