リウマチと漢方

千里中央駅直結 SENRITOよみうり片岡整形外科リウマチ科です。

近畿地方も台風が過ぎ去り、空も徐々に秋らしくなってきています。

さて、タイトルの関節リウマチ(以下はリウマチとします)と漢方薬についての、現在の当院の考えは以下の通りです。まず、リウマチの目標は関節破壊を予防し、日常生活に障害がないようにすること、ひいては健康寿命を長くすることです。そのために、関節破壊が起こる前に診断し、治療介入することが推奨されているのです。

現時点で、関節破壊の抑制効果が明らかなのは、メソトレキサート(リウマトレックスなど)と生物学的製剤です。いずれも用法に注意は必要ですが、これまでのデータで有効性は確認されています。したがって、重症例や若年者にはこのような薬の使用が必要な場合が多くなります。これにタクロリムス(プログラフ)を追加する場合もあります。

一方、比較的軽症な場合、サラゾスルファピリジン(アザルフィジンなど)やブシラミン(リマチルなど)、イグラチモド(ケアラムなど)も有効な場合があります。このようないわゆる抗リウマチ薬を組み合わせて治療するのが標準的です。

あともう一つは、常に悪役とされるステロイド(プレドニゾロン、プレドニンなど)です。痛みをとり、炎症を鎮める効果は抜群ですが、関節破壊の予防効果は弱く、種々の副作用があるため、治療初期の痛みをとるために短期間使い、徐々に減量、中止していくのが一般的です。コントロールの難しい方でもなるべく少量(一日3mg以下)にすることが多いと思います。

では、漢方はどのような場合に使うのでしょうか?

当院では、症状や血液検査、レントゲンなどではリウマチと診断しきれない、いわゆる未分類関節炎の経過観察時(通常6カ月以内です)、および上記の抗リウマチ薬のサポートとして投与しています。これまで発表された論文やデータからはなかなかそれ以上の患者さんに漢方のみで対処するのは難しいのではないかと考えています。

まだ開院間もない当院へも数年間漢方だけでリウマチを治療したがよくならないといって来院され、すでにレントゲンでの関節破壊が起こっている患者さんもおられます。現在の医療では一度傷んだ関節を元に戻すことは難しいからこそ、予防が重要視されているのですが、まだまだ多くの患者さんにそのような情報が届いていないのかもしれません。

インターネット上にも、リウマチの治療に関して漢方のみで治療できるとか、ステロイドや抗リウマチ薬は有害無益といって患者さんの不安をあおるような情報や体験談などがあふれています。実際、漢方のみで治癒される患者さんがあることは否定しませんし、そのこと自体は喜ばしいことです。ただ、そのような情報には、どのような患者さんに漢方が効き、どのような患者さんには効かないのか、実際の有効率はどの程度か、どのくらいの期間で効果を判定するのかなど、臨床上必要なデータが記載されていないことが多いのです。漢方で治らなかった方の体験談というのはほとんどありませんが、その有効率が標準治療を超えているとは考えにくいと思います。まとめていうと、標準治療では70-80%程度の患者さんで症状の進行を抑えられますが、副作用や薬の継続が必要といった面もあります。一方、漢方などが効いた場合、患者さんは非常に楽だと思いますが、その有効率がわからないので、それだけに頼るのは難しいと考えています。また、漢方を勧める方の中には、そのほかの薬を使ってはならないという主張をされている方もあり、そのように治療の選択肢を狭めるのはいかがなものかとも思います、

まだまだリウマチに関してもわかっていないことが多いため、将来的には現在の標準治療が否定され、漢方のみでの治療も可能となるかもしれません。しかし、現時点で当院はリウマチの治療について上記のような考えを持っています。実際には患者さんとご相談し、治療方針を決めるわけですが、できるだけ適切な情報を提供できるように、新たな知識の吸収に努めようと思います。

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